エル・キャピタンやハーフドームなどの巨大な花崗岩の頂が見下ろす、うっそうとした松の森。それがシエラネバダ山脈の西側に13kmに渡って広がるヨセミテ渓谷の景色である。ヨセミテは先住民であるアワニチ族からはアワニーと呼ばれていた。アワニチとは「アワニーの渓谷に暮らす民」という意味である。しかし、アメリカ西部ではよくある話ではあるが、資源 (この場合は黄金) を求める機運が、軍隊に支援されたヨーロッパ系アメリカ人入植者をこの地に呼び寄せることになる。1851年、カリフォルニアの先住民と合衆国軍の大規模な紛争のさなか、テナヤという名の族長率いるマリポサ大隊がアワニチ族を攻撃した。アワニチ族は全滅こそ免れたものの、新たに生じた「空白地帯」 (少なくとも州の言い分によれば) は、その自然の美しさや巨大なセコイアの森などからアメリカ初の国立自然公園となり、大勢の観光客や芸術家がこぞって訪れるようになった (画家のトーマス・エアーズもその1人である)。アワニチ族と同様、アワニーの美しさは今なお健在だが、アメリカ発の国立公園創設には美しい景観の陰で見過ごされがちな歴史が存在しているのだ。