荒々しい絶壁が印象的なマッターホルンは、アルプスにそびえる単独峰である。標高約4500mのその大いなる頂は、周囲の山々を悠然と見下ろしている。世の名峰と呼ばれる山の例に漏れず、マッターホルンも見る者の心に登頂欲をかきたててきた。
長年にわたり、登山家はマッターホルンを挑む価値のある好敵手とみなしてきた。19世紀のある登山家が、この山を登頂不可能と評したことは有名だ。しかし1865年7月14日、エドワード・ウィンパーと10人の登山家からなる登山隊が頂を目指して出発し、この主張が誤りであったことを証明した。マッターホルンは彼らのうち4人の命を奪ったが、ウィンパー隊は史上初めてこの山を征服したのである。ちなみに、この山を「登頂不可能」と言った登山家は、他ならぬウィンパー自身だった。彼はそれ以前に何度も登頂に失敗しており、この時が7度目の挑戦だった。