「エクアドルとペルーの解放者」とも称されるアントニオ・ホセ・デ・スクレは、スペインからの独立戦争当時は、シモン・ボリバルの腹心とも言うべき軍人であった。15歳で軍に加わった彼は、すぐに親スペインの王党派に対抗する共和主義運動に参加した。彼の活躍として有名なのは、アヤクチョの戦いでの勝利だろう。この戦いで、スクレ軍が統率を失ってバラバラになっていると思い込んだ王党派は、愚かにも兵力を散開させたまま突撃した。これに対してスクレ軍は兵力を集中させ、敵が側面に回り込む前にこれを捕捉、撃破したのだ。この戦いにより、ペルーと南米高原地域の独立は決定的なものとなった。

その後、高地ペルー、あるいはアルト・ペルーと呼ばれる現在のボリビアにあたる地域の初代大統領に選出されたスクレは、銀の豊富なこの地域を奪回しようとする親スペイン派を繰り返し破った。しかし勝利の後に待っていたのは、将軍たちによる内輪もめだった。とりわけ、スクレが新国家のためにカトリック教会の土地を接収しようとしたことは、南米の保守派の怒りを買った。1830年、スクレは暗殺によってその生涯を閉じた。犯人はエクアドルの独立分離を画策していた勢力と言われているが、真相は定かでない。