血液のかわりに海水が体内をめぐっているかのように、生まれながらに大海原での活躍が期待される者がいる。歴史の中でそうした人物は「大」提督になると相場が決まっていた。大航海を指揮し、戦艦と砲撃を交わし、罪なき商船を恐怖のどん底に叩き込むのが大提督だ。海に漕ぎ出しても (そう簡単には) 溺れ死んだりしないとわかると、人類はあらゆる種類の船で浅瀬から遠洋まであらゆる場所を航海した。李舜臣、クリストファー・コロンブス、ホレーショ・ネルソン、山本五十六、デヴィッド・ファラガットなど、海で名を挙げた人物は枚挙にいとまがない。彼らの努力もあって世界は狭くなり、文明は拡大することができたのだ。だが、彼らは自らの意志だけで行動したわけでもないのかもしれない。「海… 一度その魅力に取りつかれると、いつまでも振り払うことはできない」とは、かのジャック=イヴ・クストーの言葉である (その気になれば、彼も優れた大提督になっていたに違いない)。