カナダで最も人口の多い都市であるトロント (2011年で約260万人) は、1750年、イロコイ族がビーバー戦争の果てにこの地域を放棄した後、フランスの小さな貿易拠点としてはじまった。しかしそれほど良い立地ではなかったようで、フランスも1759年にこの地を放棄している。ミシサガ族がこの地域を戦わずして受け継いだが、アメリカ独立戦争の時代に多くのイギリス王党派がオンタリオ湖北方の未開の地にやって来た。1787年にイギリス王党派はミシサガ族と「トロントの購入」について交渉し、千平方メートルを超える土地を手に入れた。

イギリス人はトロント湾の入口にヨーク要塞を築いたが、直後の1812年に発生した戦闘の結果、アメリカ軍に占領され、要塞は破壊された (あまり知られていないことだが、このヨークの略奪はイギリス人がワシントンに火を放つ最大の動機となった)。その苦い経験と、1837年に発生したトロントのウィリアム・マッケンジー率いるカナダ北部反乱の失敗を経て、トロントは成長、進歩、そして工業化の時代に突入した。グランド・トランク鉄道とグレート・ノーザン鉄道が共同でユニオン駅を建設した。また、オンタリオ湖を行きかう蒸気船とスクーナーにより、トロントは大陸内部の資源を手に入れる玄関口となった。

このすべてが融合してトロントは産業の中継地となった。たとえば、複数の蒸留所が操業を開始し、この街を北米最大の酒の生産地にした。グッダーハム・アンド・ウォーツの蒸留所は、1860年代中頃には世界最大のウイスキー工場となっていた。1904年に起きた大火災で中心街の大部分が廃墟と化してしまったが、街はより「上品」に再建され、多くの産業が郊外へ、特に工場や倉庫は操車場や港の近くへ移転した。現代のトロントは (酒を除くと)、自動車、鉄鉱、化学薬品、紙、加工食品の生産地となっている。