国家のアイデンティティが確立しはじめると、そのアイデンティティを称賛し、そこに至るまでの歴史的要素を保存しようという動きが出てくるものだ。かくして生まれたのが国立歴史博物館である。国立歴史博物館の役目は、重要な事物や記録を集め、失われないように保存したのち、それを解釈して市民や観光客に公開することにより、国家や国民の物語を後世に語り継ぐことである。
国とそれを構成するすべての集団の歴史的、文化的業績を称えることこそ、国立歴史博物館が目指す理想の形だ。現代においては、民族的、文化的な少数派集団を尊重することの重要性が増している。それにともない、そうした集団について語られる機会も増えており、語られ方も一様ではなくなっている。結果として、それまで信じられてきた耳ざわりのよい国家的通説に疑いの目が向けられることもある。だが、真実を追求する姿勢や大きな貢献をしながらも歴史の闇に消えていった人々を再発見しようという取り組みを通じてこそ、国の過去を正確に描き出すことが可能となるのであり、もしかしたら私たちがよりよい未来に進むための展望も開けるかもしれないのである。