「平和に来たる者」イムホテプは紀元前27世紀、エジプト古王国時代の建築家にして神官だった。彼の設計によると言われるジェセル王のピラミッドは、エジプトで最古の大規模な石造建造物であり、墓として使用された最初のピラミッドでもある。初期のファラオが泥レンガでできた正方形の墓 (マスタバ) に埋葬されたのに対し、イムホテプが設計したピラミッドは石造で、規模もじつに壮大だった。使われている資材はただ積み上げられているのではなく、異なる建築資材を使用することで4面がもたれ合って互いをしっかり支えていた。もちろんピラミッドは単なる墓ではない。その内部には、分割された魂のかけらを含む、没したファラオの神殿があり、ピラミッド本体の周辺や地下も合わせて巨大な複合施設を形成していた。
ピラミッドはその後数千年にわたってエジプト建築技術の変わらぬ象徴となったが、それもイムホテプの優れた才能があればこそである。その功績を称え、イムホテプはエジプトにおいて知恵と医術の神として神格化され、ギリシャとローマの神話にも加えられた。また、それらと比べるとあまりイメージが良くないが、イムホテプは1932年と1999年に公開された映画にも悪役のミイラとして登場している。