現時点で人類最古の造船所の跡は、インドのグジャラート州にあるロータス遺跡で見つかっているが、これは紀元前2400年頃のものと考えられている。ギリシャの都市ナフパクトスはギリシャ語で「造船所」を意味し、それは古代にこの街で軍艦が建造されていたことに由来している。帝国を標榜する国には例外なく造船所がある。船は人類の歴史の中で最も早く量産されたもののひとつだった。産業革命より何世紀も以前に、ヴェネツィア国立造船所、通称アルセナーレ・ディ・ヴェネツィアでは、統一規格による部品と組み立てラインを利用することで、1日に1隻の商船や軍艦を完成させることができたと言われている。やがて船が鉄や鋼で造られるようになると、造船所は工場の様相を呈するようになり、1日に1隻を完成させるというわけにはいかなくなったが、巨大な乾ドックでは数々の有名船舶が生み出されるようになり、1909年3月にはベルファストにあるハーランド・アンド・ウルフでタイタニック号の建造が開始された。そして完成から1年ほどのちの1911年5月、この巨大客船は運命の処女航海に向けて出港したのである。