「死の名人」――エドガー・アラン・ポーは、幻想的な詩や、謎と恐怖をテーマにした物語を数多く執筆したアメリカ人作家だ。そしてポー自身の人生も謎と恐怖に満ちていた。

エドガーは、1809年1月に役者夫婦の息子として生まれたが、両親を知る機会はあまりなかった――父親は彼がまだ赤ん坊の頃に失踪し、母親も3歳のときに死んだからだ。エドガーは兄弟たちと離ればなれになり、リッチモンドに住む成功したタバコ商人、ジョン・アランとその妻フランシスに引き取られた。だが、結局ジョンとは打ち解けないまま――彼の書類の裏に詩を書き散らかしたからかもしれない――、1826年にヴァージニア大学に入学する。

エドガーは相反する欲求――書くことと軍で戦うこと――を抱えていた。1827年、最初の詩集を出版し、同じ年に軍に入隊した。1830年、陸軍士官学校に合格したが、1年後、(お粗末な) 成績が原因で退学になる。学校を離れたエドガーはもう1つの情熱に専念し、腹を空かせた貧乏作家としてニューヨーク、フィラデルフィア、リッチモンドを転々とし、最終的にボルチモアの叔母マライアのもとに身を寄せた。そこで従妹のヴァージニアと結婚したが、彼女は当時13歳だった。

1830年代後半、最初の短編集『グロテスクとアラベスクの物語』を出版した。題名がすべてを語っているが、この本はそこそこ売れた。1843年、新進気鋭の作家ポーは
『黄金虫』で文学賞を受賞した。この作品は探偵小説というジャンルの成立に寄与したポーの代表的短編の1つだ。1845年に詩『大鴉』を発表すると、ポーの名は一躍有名になった。だが、1847年の愛するヴァージニアの死によってポーは打ちのめされ、1849年10月、いささか謎めいた状況下でこの世を去った。