かの有名なホワイトクリフは、イギリス海峡の最狭部であるドーバー海峡に臨み、あたかも守護神のごとくヨーロッパ大陸に対峙している。白い石灰岩地層にところどころ黒い燧石の筋を走らせたその岩肌は、高さのある地点では標高110mに達し、晴れた日であればフランスからも見ることが可能である。この大自然の驚異はもはや単なる景勝地ではなく、一種のシンボルとしての風格をも漂わせているのであるが、しかし悲しいかな、それも永遠に続くものではないのかもしれない。ホワイトクリフの壁面は風雨にさらされて毎年約1cmずつ削れており、時には大きな破片が崩れ落ちたりもするのである。それゆえに、ホワイトクリフを訪れた観光客は皆、崖の縁には近づかないようと注意を受ける。なにしろ危険な場所だ。決してイギリス人を突き落とそうなどとは考えないように。